ナカノムラ

ナカノムラの手記

#31 信用がなければ生活は出来ない

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信用されているかどうかを自問する

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自分が信用されているのかどうかを自問することは無いだろうか。会社で怒られたときや友人にひどい扱いをされたときなど、主に自信が無くなってしまうような事態に遭遇したとき、信用されているのかどうか怪しくなってしまうときがある。

逆にあなたは他人のことを信用しているだろうか。そしてその信用の定義はなんだろうか。信用している人間には先に述べたひどい扱いを絶対にしないと言いきれるだろうか。これに対する答えは人により多岐に渡る。なぜなら信用の定義が違うし、信用しているからこそ、時にはひどいと思われるような行動を敢えて選択することもあるだろう。

私は信用というものに対し、かなり広い意味で捉えるようにしている。というより、それでいい。信用は世の中の様々な場所にあるし、信用があるからこそ生活が出来るのだ。イマイチピンと来ないかも知れない。だが、世の中の仕組みは信用で出来上がっていると言っても過言ではないのである。

 

今居る場所はどこで、そのために何をした?

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大雑把な問いであるが、例えば今いる場所をホテルの一室であると仮定しよう。ホテルに宿泊するためにはただ泊まりたいと思うだけでは普通は無理。いくつかの手続きを踏んだはずだ。ではチェックアウトまでの手順を詳細に振り返り、膨大な信用が交わされていることを実際に見てみよう。太字の部分が信用の支払い箇所やその種類だ。

 

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あなたはまず、ホテルに予約のメールや電話をするところから始まる。方法はどちらでも構わない。どちらの場合も、予約と引き換えに何かを渡している筈だ。そう、個人情報である。あなたは予約をする代わりに個人情報をホテル側に引き渡す。これで一旦の仮予約は出来た。

だがまだ仮の状態で、予約は完了していない。大事なものがある。お金だ。お金をホテル側へ渡さないといけない。しかしこれはよくよく考えればおかしなこと。まだ宿泊していないにも関わらず、お金は事前に渡しておかなくてはならない。サービスを受ける前なのに、もし天災でホテルが営業停止になったらそのお金は返ってくるのだろうか。そんな心配もしたくなる。

もし約款に返金の旨が記載されていたとしても、ホテル側は100%保証出来るのであろうか?我々がその確証を掴むことは難しい。だが仕方ない。ホテルへ泊まりたい上、ホテル側がそう要求しているのだから最初に支払うしかない。というわけで、あなたは10,000円を指定の口座に振り込んだ。

 

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次にホテルへ向かうための交通手段を選択しなくてはならい。今回は誰にでも利用できる公共交通機関を選択したとしよう。今度はあなたはそのために何を引き渡すのだろうか。ここは非常に単純である。お金だ。お金を支払うことで公共交通機関を利用できる。個人情報を開示する必要がない。だから誰にでも利用できる。戸籍が無いアウトローだって利用できる。信用レベルが比較的低い状態でも利用できるサービスだ。ここであなたは2,000円を使った。

 

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ようやくあなたは交通機関を駆使してホテルへたどり着いた。ここではチェックインを済ませる。事前に渡しておいた個人情報を再度記入する。ここでも事前に把握している個人情報を記入できる人物かどうかをホテルはチェックしているので、信用情報を観察されている。お金は事前に決済しているので、記入に問題が無ければ自室へ入ることが出来る。

最後にホテルのチェックアウトだ。今回は最初に入金をしていたが、ついつい面倒くささからホテルのミニバーを利用してしまった。冷蔵庫に最初から入っている飲料だ。引き出しに小さなカップ麺もあったが、それにはなんとか手を出さずに済んだ。

にしてもなぜホテルの飲料はこんなにも高いのだろう。信用されていないのだろうか。泊まったホテルのミニバーの相場は、コンビニで買う値段のおよそ2倍から2.5倍の金額だった。ちなみにコンビニはホテルを出て徒歩1分の場所にある。だがもうシャワーも浴びてカラダは清潔な状態だ。備え付けのローブも着ているので、コンビニに行くのであればわざわざ着替えなくてはならない。そんなあなたのために、ミニバーは存在する。ありがたい存在だが、面倒くさがりに信用なんてものは無い。

そのため、あなたは2本の缶ビールを飲んだ。チェックアウトの際に缶ビールを2本利用した金額の合計1,200円を支払った。ちなみにチェックアウトでは一切の書記は必要無かった。ただ追加で利用した分の1,200円を支払うだけで、淡白にホテルを後にした。

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今回あなたが使った信用は以下の通りである。

 

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・氏名

・電話番号

・住所

・宿泊代10,000円

・交通費2,000円

・ミニバー代1,200円

・ホテルへの根拠のない信用

 

ホテルに宿泊するだけで、あなたの信用という名の資産をこんなにも消費した。実際には宿泊中に外出して食事もするので、もっとたくさんの信用を消費する。

個人情報を『消費する』とは言わないが、ホテルの名簿がハッキングされる可能性はゼロではない。なので、いつか来るかも知れない何らかの被害を考えれば、個人情報の引き渡しも消費に繋がるリスクのある行為だ。

ちなみに、お金は信用そのものだ。クレジットカードという言葉があるだろう。クレジットは英語でCredit、つまり信用である。信用のある者のみが持つことの出来るカードだ。そのカードで何が出来るかといえば、お金の支払いだ。だからお金は信用と直結する。

もっと分かり易く言えば、お金は自分で金属を磨き上げたり和紙に印刷して作るものではない。誰かから貰うことで得ることが出来る。他人からお金を貰うなど、信用が無いと成立しない。信用できない人間にはお金を貸すことも出来ないし、あげることも出来ない。あなたは信用されているからお金を得ることが出来ている。

最後のホテルへの根拠のない信用は、見落とされがちだが実際にそうだろう。ホテルがあなたを守ってくれる可能性はあかるもしれないが、その根拠なんて誰も考えていない。勝手に信用してお金を事前に渡すというリスクを平気で支払っている。しかし高級ホテルであれば別だ。むしろ信用を買うために高額な支払いをすることになっている。

 

信用の交換はそこら中で繰り広げられている

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ホテルの宿泊の一連の流れだけでこの有様だ。今身につけている服、今朝食べたトースト、今日笑顔で挨拶を交わした同僚との会話、座席を譲ってくれた紳士、そして今このブログを見ているデバイスも、全てあなたの信用が生み出したり、信用の消費で得たものだ。

本当に信用を無くしてしまったら、もう野宿しかない。例えば路上生活者が、本人は路上生活から脱したいと願っているのにそうである所以は、戸籍が無いからである。お金が無いと言うよりは戸籍が無い。戸籍があれば保護を受けることだって出来るはずだ。戸籍が無いとどこの誰か分からないため、そもそも信用されない。

もし自分が信用されていないなどと思うのであれば、それは間違っている。信用が無ければ、このように生活は不可能な仕組みになっている。信用があるからこそ、文化的な生活を営むことが出来るようになっている。

 

サバイバー 池袋の路上から生還した人身取引被害者

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おわり