ナカノムラ

ナカノムラの手記

#34 情報化社会下では部下は言うことを聞かない

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部下の取扱に注意

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私は講師を職業にしている。特に一つの場所にとどまらず、津津浦浦様々な場所に出向いている。そこで出会うのは指導者やリーダー達だ。彼らは常に何名かのチームを率い、仕事をこなす。どこにでもある一般的な企業の組織体系だ。

しかしその多くが、部下の扱いに悩んでいる。一口に扱いと言っても様々だが、最たるは「言うことを聞いてくれない」こと。自分がして欲しい指示を部下に伝えても、そのと通りに動いてくれないのだという。

私は、もう喉元まで来ているその悩みに対する答えを言いそうになる。が、立場上余計なお世話になることを重々承知している。だから寸出のところで何も言わず、そのまま立ち去ることはよくある話しだ。

ではその答えとは何なのか?非常に簡単だ。部下は言うことを聞いてくれるものではない。これが正解である。聞かないのだ、本質的に。ではその理由は何なのか。正直、理由はたくさんある。だがどこを見ても書かれていない大きな理由が一つある。それは情報化社会がもたらしたものだ。

 

部下の考えていることは分からない

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情報化社会など聞き飽きたかも知れないが、少し我慢して欲しい。情報が入り乱れる社会構造、つまりインターネットの普及が、言うことを聞かない部下を量産していることに気付かなくてはいけない。

部下が言うことを聞かないとき、あなたはなぜその部下が言うことを聞かないか、考えたことはあるだろうか?意外とそこまで頭が回っていない上長は多い。

 

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あなたが指示Aを部下に伝えたとする。このときに部下は指示Aを承諾した。指示Aの締切は1週間後に設定した。その後2〜3日経過しても、部下が指示Aについて動いている様子が見受けられない。むしろ暇そうだ。なんなら、たまに業務とは関係の無いwebサイトを見ている。

なんとか部下は指示Aを期限ギリギリにあなたに提出してきた。だがあなたは驚愕する。指示内容とは全く違う成果物だったからだ。

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上司と部下のどちらに問題があると思うだろうか?答えは部下だ。部下は不測の事態に備え、指示Aをもっと早く仕上げておけばよかった。のんびりしている暇があるなら期限内に仕上げれば良かった。それに結果間違っていたのであれば、もっと上司の言うことをよく聞いておかなくてはならなかった。

・・・・と、いうのは嘘である。申し訳ない、私が書いた上の4行は嘘だ。実は上司に原因があると考えたほうが自然だ。というより、上司に原因があると考えるほうがスムーズに業務が進行する。

例文には書かれていない状況がある。それは、上司がどのように指示Aについて指示をしたか、それから、部下の社会規範に対する考え方だ。この2つは上司がコントロール出来る領域になる。逆に言えば、上司がどのように指示Aについて指示をするかと、上司の社会規範に対する考え方は、部下がコントロー出来るものではない。つまり、コントロール出来る側の上司が工夫をすれば、今回のような事態にはならなかった。

多くの場合はここで思考が止まる。部下がどう考えているかは分からないので、上司は気をつけましょう。ただそれだけだ。

ではなぜ部下の考え方に違いがあり、それが仕事に影響を及ぼすのか。その理由を考えたことはあるだろうか?年配のリーダーは「私のときは上司の言うことは絶対だった」と言う。

ならばなぜ、現代の部下たちは自分がそうであったように、言うことをしっかり聞けないのか。少し前フリが長くなってしまったが、情報化社会がそうさせている。情報化社会は、言うことを聞かない部下を量産してしまった。情報の荒波に揉まれている部下たちは、自分で考え過ぎてしまったり、解決する術を身に付けてしまったのだ。

 

情報化社会がもたらした新たな自我

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情報が行き交う時代が普通の彼ら彼女らにとって、最も頼れる存在はGoogleだ。キーワードを入力し検索するだけで、答えが返ってくる。しかもその内容は詳しい。次に生活のパイの多くを占めるのがSNSだ。おじさん達には理解出来ないだろうが、日常のどうでもいいことをひたすら書き連ねられたリストのようなものを、夜更かしまでして延々と眺めているのが現代の部下たちだ。

こういった情報に普段から触れていると、どんどん自我が醸成されていく。自我は持って構わない。自我が無いなどつまらない人間だ。しかし昔は、少なくとも仕事中は上司の言うことは絶対で、反対など出来なかった。だが今はどうだろう。すぐに会社を辞めたり、上司に逆らったり、論破しようとする者まで居る。

なぜそうやって反対的な行動を取るのかと言えば、自分の考え方を自分で決めているからだ。当たり前だが、情報化社会ではこの傾向がより強くなる。

部下といえども、少なくとも20年程度はこれまで生きてきた。その中で色々な問題にぶち当たってきたことだろう。その際の解決策について、親に聞いたり先輩に相談したりもして来ただろうが、予想以上にGoogleに聞いている。

なぜそうなるのか。答えは簡単だ。聞くのが恥ずかしいからだ。親にも先輩にも、ましてや友人には絶対に相談出来ない悩みは、全てGoogleに聞けば答えが分かってしまう。あなたも過去、性的な悩みについて誰にも聞けず悶々としたことは無いだろうか。他にも、親との関係が悪化する思春期なんかに、なぜ自分が生きているのかを自問しなかっただろうか。このような疑問は、Googleに聞けば解決だ。

更に疑問のクセは個々様々な上、一つの検索結果から他の関連ページに次々接続することが出来る。インターネットはテレビと違い、飽くまでも能動的だ。テレビの情報を受信するための装置がテレビ自身だとしたら、インターネットの情報を受信する装置はブラウザにあたる。ブラウザは初期値では大した情報は入っていない。知りたければ検索をし、そこから探る。そしてお気に入りに入れる。

テレビと違い能動的になるため、自分でその情報を見つけた気にさせてしまう。となれば、その情報に対する自信が生まれてくるため、簡単にそこで仕入れた考え方を変えることが出来なくなってしまう。

それだけではない。Googleの次はSNSだ。SNSでは同じような考え方の者が集まりやすい。自分で検索して見つけた答えがより間違いではないと確信する。『検索結果→SNSでの承認』の流れがしっかり完成してしまうと、よりその強固な確信になる。

つまり、考え方がもう定まっているから、部下は言うことを聞かないのだ。だから、あなたや上司の言っていることが、間違っているとさえ思っている。そこを念頭に置いて部下に接するべきだ。さもないとあなたは「ハラスメントだ」などと叫ばれ、怪我をする。

 

社会に出てから更に加速する

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この一連の動きは社会に出てからも同じだ。上司に叱られた、同僚とモメたなど、様々な悩みを『検索』する。その結果が自分の考え方としてめきめき醸成されていく。

あなたは新入社員研修がなぜ団体で、しかもユニークであるかご存知だろうか。洗脳するためだ。入社までの経験や知識は必要ではなく、会社のルールに徹底的に慣れさせるための洗脳。つまり、疑問を持たせないようにするためだ。疑問を持つ部下よりも、言うことを聞いてくれる部下のほうが扱いやすい。そういうことだろう。

時代は変わった。なんでも言うことを聞く部下が良しとされている時代でもない。創意工夫が、新しい世代の部下から生まれてくることも多い。

部下が言うことを聞かないのは、情報を自ら取捨選択しているからだ。自分の悩みにフィットした情報をひたすら集めているうちに、それが唯一の考え方だと感じてしまう。これは同じ上司や同じ会社のもとで働き続けたあなたの常識と、根本的には何ら違いはない。会社で学んだのではなく、既にGoogleSNSで学んでいたということだ。どちらかと言えば、そのぶん部下のほうが一枚ウワテかも知れない。

この前提を踏まえた上で、今日からは部下に挑んで欲しい。部下たちは情報化社会の影響をモロに受けている。いわば彼や彼女は、情報化社会の被害者だ。どれが本当でどれが間違っているかなど分からない、多感な思春期から情報に触れている。そう思って、暖かく迎えてあげて欲しい。

 

情報化社会 復刻版―ハードな社会からソフトな社会へ

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おわり